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2017.05.31  7:17

Vol.2シェルター・メディシンセミナー 「より良い譲渡に向けて」参加リポート 第1部 感染症管理:感染症管理計画と重要感染症/田中亜紀先生

シェルター・メディシンセミナー2日目、田中先生からはシェルターでの感染症管理の具体的な手法について、入交先生からは猫の行動学についての講義がありました。いずれの講義も非常に実践的な内容で、参加された方はメモをとりながら熱心に聞き入っていました。講義の概要をご報告します!

 

田中先生
 

第1部 感染症管理:感染症管理計画と重要感染症/田中亜紀先生

 

田中先生の講義のテーマは、シェルターでの感染症管理計画と各重要感染症の管理方法についてでした。まずは猫の感染症の代表格・上部呼吸器感染症についての解説がありました。

 

■猫の上部呼吸器感染症(URI)

猫の上部呼吸器感染症(URI)の原因となる主な病原体は、カリシウイルス、ヘルペスウィルス、ボルデテラ、マイコプラズマ、クラミジアなど。従来は、このうちカリシウイルスとヘルペスウィルスがURIの主要原因だと考えられていましたが、これまでの研究により、実際にはシェルター内で発生するURIのほとんどが、ヘルペスウイルスによるものであることが明らかになりました。また、症状の有無にかかわらず、すべての猫が上記の病原体を保有していることも明らかに。田中先生は「すべての猫がウイルスを保有していることを前提に、発症を防ぐ措置をとることが重要」と訴えました。

*ヘルペスウィルス保有猫が呼吸器症状を示し、ウィルスを排泄することでURIが広がることになります。

 

<上部呼吸器感染症を防ぐストレス管理>

では、URIの原因であるヘルペスウイルスが排泄し始めてしまう原因は何なのでしょうか。

田中先生によると、最大の原因は「ストレス」。猫のストレスを最小限にする収容環境を整えることが、URI予防の第1歩だということです。

 

猫のストレス管理のポイント

① 隠れ場所を作る

⇒他の動物や人の目から逃れられる場所を確保してあげましょう。箱や袋を置く、目隠しの布をかけるなどの工夫を。

② 寝床、食事場所、トイレはそれぞれ50cm以上離して設置する

⇒スペース的に難しい場合は、棚を設置するなどの工夫を。

③ トイレはなるべく小さく、砂は少なめにする

⇒消化管内寄生虫の感染予防のため、砂は毎回捨てる(12時間おきに交換するのが望ましい)

④ 移動しない

⇒ケージの移動で80%の猫がウイルスを排出すると言われています。

 

⑤ スポットクリーニングをする

⇒汚れたところだけふき取り、タオルやベッドはずっと同じものを使いましょう。収容スペースを2区画に分けておくと、猫に触らずにスポットクリーニングができ、感染予防につながります。

⑥ 収容場所の床面積は274㎠を確保

⇒ディビス校の研究では182㎡以下はNG。

 

<URIの猫の譲渡>

アメリカでは軽度のURIであれば「1日も早く譲渡してシェルターから出す」という考え方が主流。日本のように「URIを治してから出す」とシェルターでの滞在時間が長くなり、譲渡の機会を逸することや再発を繰り返すと解釈されています。

 

■真菌症

真菌症は感染被毛への接触や媒介物(タオル、玩具、人の手など)への接触、飛沫等によって感染します。どの年齢の動物も真菌症に罹患する可能性がありますが、特に幼齢(1歳未満)や老齢動物の感染が多く見られます。ペルシャ猫やヨークシャーテリアなど長毛種のほうが感染しやすく、犬よりも猫の方が感染しやすいとされています。家庭のペット動物であれば、3ヵ月以内に自然治癒するケースがほとんどですが、シェルターやフォスターにおいては、他の動物への感染を防ぐために、早期治療が欠かせません。治療の際には収容環境の除染を必ず同時に行って下さい。

 

<真菌症の治療>

・剃毛

・局所治療(群における治療では最重要項目)

⇒被毛を除菌し、芽胞の発育を防いで汚染拡大を防ぎます

最も効果的な除菌剤はライムサルファー。ミコナゾール+クロロヘキシジンシャンプーも有効。

・全身投与(治癒時間を短縮)

⇒イトラコナゾール

 

<真菌症の管理>

・隔離

⇒検査結果が陽性の個体、疑いのある個体、ハイリスク(幼齢・老齢等)の個体は隔離が必要。隔離ができない場合は機械的洗浄と消毒で、徹底した媒介感染・飛沫感染の予防を。

・衛生管理

⇒飛沫感染を防ぐ

 

<真菌の除染>

・機械的洗浄

⇒表面を洗剤/消毒薬で3回

・消毒にはAccel(過酸化水素0.5%)、塩素(32倍希釈で最低10分間)、エニルコナゾール、ペルオキシ―硫酸カリウムなどを推奨

・有機物は必ず除去すること

 

■犬の下痢

犬の下痢の原因としては、ストレスや食事の変化、免疫力の低下などが挙げられますが、シェルターでの原因特定は事実上不可能です。衛生管理やストレス管理、食事の管理を見直し、必要に応じて治療を行いますが、治療に抗生物質をあたえるのは良くありません。腸内環境が変わって、さらに下痢症状を悪化させてしまうリスクや耐性菌の問題もあります。

カンピロバクターや大腸菌等、ズーノーシスの原因菌は健康な犬にも常在しており、環境や食事の変化、ストレス等によって活性化します。

 

■感染流行/爆発管理

<感染流行/爆発/アウトブレイクの6項目>

1.罹患動物の診断と隔離

2.曝露/危険動物の同定と管理

3.環境の除染

4.新入り動物を守る

5.報告

6.コミュニケーション(スタッフ、関係者、譲渡希望者、市民)

※以上の6項目を同時に実施してください。

 

<罹患動物の診断と隔離>

感染流行時は動物を次のように分類します。

1.感染個体(無症候性、症候性問わず)

2.曝露され、将来的に感染を起こすリスクのある個体

3.曝露されているが、感染のリスクはない個体(ワクチン接種済みなど)

4.曝露されていない個体

 

理想的な隔離は、

・物理的に完全に離す

・収容場所、器材、備品を変える

・専用の白衣、ズボン、手袋、靴等を使用する

※フットバスは効果なし

 

しかし、多頭飼育状態では十分な隔離や治療ができないケースが多いのが現状です。その場合はオフサイト(収容施設から離れた場所、動物病院等)に移動させることも検討すること。もしオフサイトへの移動が無理な場合は、それ以上の苦痛を与えないため、また感染を拡大させないために「安楽死」も検討してください。十分な治療を行わず施設に収容を続けることは、動物のためにも人のためにもなりません。

 

<病原体の伝搬を防ぐポイント>

感染拡大を防ぐためには、病原体の伝搬を防ぐことが第一です。伝搬防止のポイントは次の通り。

1.効果的に消毒ができる床材を選ぶ。

⇒ステンレス製のもの、コンクリートがむき出しでないもの、無孔(凹凸がないもの)、ひっかき傷がないものを選ぶこと。

2.病原体に対して効果が実証されている消毒薬を日常的に使用する。

3.動物を移動しない⇒2区画に収容し、スポットクリーニングを徹底する。

 

5.罹患動物を速やかに同定し、隔離する。

6.健康な動物と罹患動物で使用する物(備品、器材)、白衣等を変える。

7.過密な状態で収容しない。

 

<新入り動物を守る>

・リスク動物の同定と隔離を同時に行います。

・シェルター内の感染流行が重篤な場合は、収容制限も検討すること。

⇒飼い主に引き取りを待ってもらい、同時にワクチンを接種しておく。

 

<ワクチン接種>

生ワクチンを収容時に接種しましょう。感染を予防し健康な動物を守るためです。また、曝露動物にもワクチンを接種すること。ただし、過去の曝露からの発症は防ぐことができません。

 

<記録/報告>

診断や予防の一助とするために、感染症について以下の項目を記録しましょう。

① 何が原因か?

② 何頭?

疑いのある症例数と確定症例数=罹患頭数と、曝露動物数を数えます。

罹患頭数と曝露動物数を比較することが、原因の解明に役立ちます。なお、

犬インフルエンザは免疫がほとんどないので、曝露時にほとんどが罹患する可能性があります。

③ いつ病気が起きたか?

感染症の発病の速さが原因解明の一助となります。

例:犬インフルエンザ⇒潜伏数日間

犬ジステンパー ⇒潜伏数週間

④ どこから来た?どこに収容されていた?

罹患動物がどの地域から来たのか?シェルター内のどこに収容されていやのかを追跡します。野外感染であれば、汚染地域を特定します。

 

<リスクコミュニケーション> 

感染症流行の被害、風評被害を防ぎ、地域での感染の伝播を防ぐためには、シェルターのスタッフ、ボランティア、クライアント、メディア、地元獣医師等の間でリスクコミュニケーションが欠かせません。曝露、感染動物がいた場合は、最近譲渡した人や一時預かりや団体譲渡先、動物病院等に必ず連絡をしてください。なお、感染流行中(特に原因不明あるいは稀な感染症疾患の感染流行中)に最も重要なリスクコミュニケーションは、「協力を求めること」です。死亡率が高い感染症、新興疾患、ワクチンの効果がない場合、ズーノーシス、外来病原体が疑われる場合は、迷わず、専門家や大学、シェルター・メディシンの専門家等に協力を仰ぎましょう。

 

■CASE STUDY 動物病院での発生

場所 アメリカ・ロサンジェルスの大規模な動物病院。病院内は「A:救急病院」「B:一次診療」「C:一次および二次診療」の3つの科が通路で仕切られています。

 

経緯  6月22日

5歳の去勢雄猫・ラッキーが消化管の手術後のモニターのため入院。ラッキーは室内飼いで、ワクチン接種済。入院後発熱し、24時間以内に心不全で死亡。

 

6月22日~30日

院内で術後の合併症が増加。ラッキーの同居猫も発病。院内の猫、看護師の猫が相次いで発病。

 

6月30日

診断と介入処置開始。カリシウイルスの疑いがあるため、感染領域だけでなく、猫の出入り場所は全て塩素消毒。罹患猫は確実に隔離。検体を培養。

 

リスクファクター(危険因子)

・曝露猫の94%が感染

・感染猫の41%が死亡

⇒成猫59%、子猫14%

・ワクチンの効果なし

⇒ワクチン接種した猫で23症例

経鼻と皮下注射によるワクチンに優位差はなし

 

調査結果

さらに地域内の4つの動物病院で同様の感染が確認された。その4つの動物病院には同一のレスキュー団体が出入りしていたことが判明。さらに調査を重ねた結果、6月17日~24日診察室Bで不妊手術をした猫が退院時に発熱、軽度のURIであったことが判明。同団体でレスキューされた曝露子猫25頭中23頭(92%)がネコカリシウイルスに感染、レスキューされた子猫で曝露を受けなかった15頭は発症しなかった。

 

教訓

・臨床現場や多数の動物病院が関与した複雑さが感染拡大の原因となった。

・早期に広範囲なリスクコミュニケーションがとれていれば、もっと多くの命が救えた可能性も。

・疾患発症時はスタッフとの話し合いを強化し、報告すべき対象を特定すべき

・動物を扱うすべてのスタッフは必ず着替えをするべき

・何かが疑われた場合は、塩素消毒をするべき

 

この後、中型シェルターでのパルボ感染症の事例、猫と人での感染流行事例等の紹介があり、田中先生による今回の講義は終了。具体的で実践的な内容の講義に受講者からは盛大な拍手が贈られました。


 

■メリアル・ジャパン「セーブペットプロジェクト」の紹介

入交先生の講義の前には、今回のセミナーの協賛企業であるメリアル・ジャパン株式会社の企業紹介が行われ、同社が取り組んでいる犬猫の殺処分数低減を目指す取り組み「セーブペットプロジェクト」の紹介動画が放映されました。セーブペットプロジェクトでは、メリアル・ジャパンの「ネクスガード」「フロントライン プラス」、犬フィラリア症予防薬、犬用および猫用オールインワン寄生虫ケア薬の売り上げの一部を新しい家族を探す犬や猫のために役立てる活動を続けています。プロジェクト開始以来、これまでに支援した医療費は約4,700頭分。日本獣医師会を通じて全国の動物愛護センターや自治体に寄贈したマイクロチップリーダーは200台を超えています。

 

Ⓡメリアルの登録商標


 

第3部 「アメリカシェルター視察報告」/東京都福祉保健局健康安全部環境保健衛生課動物管理担当:鈴木良氏

第2部 シェルター・メディシン・セミナー 「犬の気持ちを理解するための犬の行動学」/入交眞巳先生

Vol.1シェルター・メディシン・セミナー 「より良い譲渡に向けて」参加リポート

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